目次
1.製品紹介
2.技術コラム
3.書籍紹介 
4.自動車開発最前線
5.青ちゃんの言いたい放題
6.技術コラム
7.やまのひとりごと









1.製品紹介
【二円筒試験装置】
本試験装置は2個の円筒を供試体として、転動疲労試験を行う装置です。
相対回転する供試体に、荷重と一定のすべり率を与え摩擦トルクを計測します。
試料油温度及び試料部雰囲気温度の制御ができます。

装置外観
 




2.技術コラム
[諸刃の剣]
 弊社では研究開発部門向けの装置を納入することが多く、設備の更新も請け負うことがよくあります。その際、既存の装置に付属されているソフトを眺めていると、画面や使い勝手に各社の個性を感じます。最近ではその画面的特徴から、一見してどのメーカが作っているのかわかるようになってきてしまいました。

 ところが、HILS関連の装置に付属する操作画面について眺めると一変。画面からはどこが作っているのかわからなくなります。その一因は、GUI画面の作成が、LabVIEWなどの従来型開発環境で行われていないという点にあります。HILS装置のほとんどは、ControlDesk(※1)やVeriStand(※2)などの新しい概念から作られた開発環境を採用しているからに他なりません。従来型開発環境で作られたソフトは、使い勝手を追求する結果、各メーカの特色がどうしても画面上に現れて来ることになります。その装置の機能に最適に特化された画面を持つということです。結果、機能が固定化され画面操作が各社で特徴的な流れを持ちます。

 一方、HILS装置は開発の最先端にありますのでその評価方法・評価パラメータ・モデルなどを可変的に扱える必要があります。その為、画面機能についてもPCに向かう担当者それぞれに再構成される性質にあるのです。ただ、使いこなすにはかなりの時間を費やして取扱方法を理解する必要があり、開発には直接無関係な業務が増えることになります。つまり、VeriStandの採用は諸刃の剣。解析自由度を提供する代償に担当者にとっては高度な技術獲得が必須となってしまうのです。また開発環境提供元も新規事業として機能を充実化させていますので、性能的にもどんどん進化していきます。VeriStandを提供することは、弊社にとっても諸刃の剣と言えます。


(※1)ControlDesk:dSPACE社製試験および計測用のソフトウェア
(※2)VeriStand:National Instruments社製テストアプリケーション用ソフトウェア





3. 書籍紹介
『深く、速く、考える。』  
稲垣公夫著 クロスメディアパブリッシング 2016年6月発行  
 新商品・新サービスの企画提案書、業務改善プロジェクト、問題対策会議、個人・グループを問わず現在の仕事は考えることばかり。
 一方、実際にそれらの業務実態は、中身の乏しい企画、目的から外れた結論、堂々巡りの議論などなど、時間ばかりを費やして、とてもクリエイティブでないものも多くあります。本書はそういった悩みをお持ちの方々に、あらためて考えるとはどういうことか?成果を出すにはどうしたらよいか?をやさしく解説したものです。

 図や例題も豊富でわかりやすい入門書としての位置づけ。時にはこういった基本的なところに立ち戻って、仕事のしかたそのものを見直してみるのも良いかもしれません。





4. 自動車開発最前線
【電気自動車の基本的特徴】
 前月は、「EVの航続距離を決定づけるのは今も昔もバッテリーの性能である」とお話させていただきました。では、何kgのバッテリーを搭載すれば、最適なEVが誕生するのでしょうか? 
 そもそもバッテリー必要容量はどの様に決まるのか?と考えてみますと、まず基本的要求値である車両重量・最高速度・航続距離・駆動モータ・駆動モータ仕様などにより決定づけられます。今回は、車輪軸における最大トルク・最高出力・最高速度の要求値を実現させるべく、効率性能の高いPMモータを採用したと仮定して考えてみましょう。 

 まず、駆動源であるPMモータは図1のように、ゼロ速度を含む範囲で最大トルク(短時間定格性能含めて)を発揮できるので、リダクションギヤは少なくて済みます。ここがEVの最大の特長と言えるでしょう。エンジン車では広い範囲のトルク-回転速度特性を実現できないため、多段ギヤのトランスミッションが必要になるのに対し、EVは非常にシンプルであると理解できます。EV車(図1)とエンジン車(図2)のN-T特性を比較してみると、さらによくわかります。

 充電と回生を上手く使うことで、結果的に燃費(電費)性能を高めることができます。図3では回転速度とトルクの4象限ごとの力行と回生の変化を例として挙げました。日常よくある運転パターンで考えてみると、低速域の高トルク発生によるエネルギーの消費と、非加速域の回生による充電がうまく繋がるとバッテリーの消費はかなり抑えることができると考えられます。そこに立ちはだかるエネルギーロスを如何に低減させるかが、航続距離向上の肝になってくるのではないでしょうか。
 



5. -コラム-
「“ぬえ”の潜む言葉の森
                                             /青木邦章
 サルの頭・タヌキの胴・トラの足・ヘビの尾を持つ日本古来の妖怪、鵺(ぬえ)。ミカンで有名な浜松市三ヶ日地区(浜名湖北岸)には、その昔武将が鏑矢で鵺を打落としたとかで、鵺代・胴先・羽平・尾奈などの地名が残っています。若い人にはそれよりもモンスト・妖怪ウォッチなどのゲームのキャラクタとしての方が有名でしょうか。

 さて本題。われわれが普通に暮らす現代社会にも、この謎の妖怪が多く潜んでいるように思われます。
 日々のビジネス会話の中で頻繁に出てくる「会社の意向」、「多くの顧客の要望」、「上司がそう言っている」、「みんなそう思っている」などの発言。会社ってどの機関決定?上司とは誰のこと?お客様の何パーセントの期待?みんなって…?真意を確認するべく、より一歩突っ込んで問い質してみると、その輪郭が急におぼろげになって闇の中に消えていきます。

 現状に不満を持ってはいるものの、積極的に事態を改革していこうという意志も希薄。また実際に変化が起こった際にはその責任を負いたくない、といった魂胆が見え見えの発言。どうも無責任で怪しげなシロモノです。親に「○○を買って!だってみんなが持っているよ…」と迫る駄々っ子のような感覚。まさにオトナゲない発言です。
 元々京都で生まれたこの妖怪、川に流され大阪湾へ、さらにはなぜか浜名湖に移って来ましたが、最近はどうやら新宿界隈の高層ビルか東京湾の埋立てエリアに出没し、日本人の生活を脅かしつつあるようです。

 この手の妖怪退治には、やはり子供に対する母親の毅然とした態度を見習うのが一番。社会全体を、自ら責任が採れる大人集団に育てなければいけませんね。



6.技術コラム
[自動車の振動・騒音]
 自家用車の評価項目として、馬力や燃費などの走行性能とは別に「乗り心地」という重要な項目があります。エンジンの振動や音に恍惚とする一部のマニアを除いて、一般的には振動や騒音は少ない方が良く、開発現場でも重要なテーマとなっています。
 自動車の乗り心地(快適性)を計る基準として「NVH」という評価項目がありますが、これはNoise(騒音)・Vibration(振動)・Harshness(ハーシュネス)の3要素のことです。最後のHarshnessというのは一般的に馴染みが薄い言葉ですが、路面の段差などによってステアリングやシート、フロアに感じる振動のことで、エンジンやトランスミッションなどによる自動車自身から発生するVibrationと区別する意味で使われます。

 そもそも自動車の振動・騒音は何かというと、これらも熱と同じエネルギーの一種といえます。エンジンの効率は30~40%ですので、自動車は投入した燃料エネルギーの半分以上を捨てながら走っている様なものですが、この捨てられるエネルギーの中にシリンダー内の爆発音や発熱、回転部品のアンバランスや歯車や軸受の機械的接触部分から生まれる摩擦熱や振動・騒音なども含まれるわけです。

 NVH試験では、実際に駆動させた部品やアセンブリに対し、加速度センサで振動の計測を、マイクで音の計測をそれぞれ行います。そして得られたデータに対し周波数解析をしながら、どの要素からどれだけの振動・騒音が発生しているのかを見極め、部品形状や材質・寸法精度・表面粗さ・潤滑油などを変えて試行錯誤しながらより良い状態を作っていくという作業が行われます。

 NVH試験を行う装置においては、当然のことながら装置自身が大きな音や振動を出してしまっては肝心の評価対象を正確に計測できません。ですので当社の装置においても、高速回転部分では構成部品のバランス修正を、組立状態ではフィールドバランス修正を行っています。また、なるべく回転方向に凹凸が無い部品構成とし、防音材・吸音材・制振材などで外部に振動・騒音が伝わらない様なカバーリング構造とする、などの配慮をして設計しています。






7.やまのひとりごと
紅葉のシーズンが来ましたね。
桜も好きだけど、山の紅葉が織り成す色とりどりのパッチワーク模様のような風景も好きなやまなのでした。