目次
1.製品紹介
2.技術コラム
3.書籍紹介 
4.ブレイクタイム
5.青ちゃんの言いたい放題
6.技術コラム
7.やまのひとりごと









1.製品紹介
クランクワッシャに任意のアキシャル荷重を付加した状態で回転させ
その際の焼付き・摩耗・疲労などの各種試験を行う装置です。





2.技術コラム
[補完力]
 国民栄誉賞を受賞した羽生名人が、対戦中に盤上を見るのは駒の移動を確認する時だけ。他の時間は頭の中の将棋盤で対局を読み続けるのだそうです。予測する範囲は、直後に打つ手の5手を5手先まで。つまり5の5乗=3,125手の中から1つを選ぶ、それを打つ手ごとに繰返していることになります。ただ最良の1手を打ってばかりでは進歩もないので、わざと悪い手を選び、その後の挽回策を積み上げる事も経験しているとのことです。

 一般的にプロジェクトを効率的に進めるためには、問題点を着手前に洗い出し、課題をクリアして設計を進めていくフロントローディングの手法が良いとされています。でも実際は、装置要求仕様が簡素で内容がはっきりしていないにもかかわらず、納期ばかりが優先され、要件があいまいなまま進めなければならない状況も少なくありません。問題となるであろう不安要素を抱えつつ、製作を進めることも多々あります。
 特に年度末は各社の検収時期が集中するので、余計にそのような進め方をせざるを得ない状況に追い込まれるケースが増えます。製作初期段階での検討はほどほどに済ませ、その後の工程でその不足分をリカバリすることを前提に作業を進める事態に陥ります。このような場面では、完成した装置に対する総合的な補完力をどれだけ持っているか?が装置技術者の腕の見せどころとなります。
 このような事は弊社に限ったことでもないようで、今年度末も弊社が納めた装置の隣で競合他社が現場で装置を組立て、装置を初めて動かそうとしているのを横に見ながらの検収を行ってきました。投資予算の分散ができ、検収時期の集中を防げばきっと装置の完成度と付加価値も上がるのではないか、と感じざるを得ないところです。

 結局のところ、フロントローディングするには事前の検討を十分にすることになります。ですが、まともに検討を始めると微視的になり問題点ばかりに気をとられる。エイヤっと進めると、後戻りが発生して非効率的になる。経験的なものが左右するところですが、まずは迷いはそこそこに一歩先に進めるのが得策なようです。





3. 書籍紹介
自動車会社が消える日』  
井上久男著 文春新書 2017年11月発行  
 自動車産業が100年に一度の大変革期を迎えていると言われていますが、その概要を経済ジャーナリストがわかり易く解説。

 「クルマのスマホ化とロボット化」我々、業界エンジニアからすると脅威でもあり、見たくない近未来?ITなど異業種からの新参組と、伝統的チャンピオン企業とのせめぎあい。さらには、メガ部品サプライヤーの世界的台頭。
 個人的見解ではありますが、世界再編が進む自動車メーカ群の中で、コトラーの言う競争地位戦略におけるチャンピオン(数社)と、ニッチャー(数社)はそれぞれの生きざまが浮かび上がりますが、フォロワー・チャレンジャーの立ち位置が見えてこないのが不安です。





4.ブレイクタイム
【新玉ねぎ】
 新玉ねぎの美味しい季節になりました。
 普段食べている玉ねぎは、植物の根・茎・葉、どの部分かわかりますか?正解は、葉の付け根が太くなった部分です。たまねぎを縦に半分に切ってみると、中心に短い茎がみつかります。植物の葉は、緑色というイメージがあるから不思議です。

 タマネギの主な栄養素は、ビタミンC・B1・B2。ほかに、カリウムやカルシウムなどのミネラル、食物繊維がバランスよく含まれています。
辛みの強い黄玉ねぎと、辛みの少ない白玉ねぎがありますが、この味の違いは辛み成分であるイオウ化合物の含有量の違いです。玉ねぎを切ると細胞が壊されて、刺激臭と辛みをもつイオウ化合物・硫化アルカリが発生します。この硫化アルカリが目や鼻を刺激して、涙が出るというわけです。
 涙を抑えるには、よく切れる包丁で切ることです。また、水にさらすと栄養成分が流れ出してしまうので、辛みの少ない新玉ねぎは水につけずに生で食べることをおすすめします。

 ここ浜松では、サラダオニオンと言う品種の新玉ねぎの栽培が盛んです。
 浜松のサラダオニオンは平べったく白いのが特長。肉質はやわらかく、みずみすしく辛みか少ないのが自慢です。スライスしたサラダオニオンは、冷蔵庫で1時間ほど保存すると、さらに辛みが少なくなります。
 我が家では、新玉ねぎをスライスして、かつお節・レモン・オリーブ油をかけ、サラダにしていただきます。そういえば、夜遅くに食事をする主人は辛いとは言わないかも…。

 旬とは、一番おいしく、栄養も豊富で体に良いもののことをいいます。ぜひ、普段の食事に取り入れたいものです。



5. -コラム-
「ぶどう産地の変遷
                                             /青木邦章
 先日、ご縁があって長野県の先進中小企業見学の機会を得ました。その際の塩尻のワイナリーでの社長プレゼンによると、近年日本におけるワイン用ブドウ産地が山梨(勝沼)から長野(塩尻)に移りつつあるとのこと。

 文献で調べてみると、H19年の実数では山梨(91ヶ所・26,437㎘)長野(同33・3,188)と、まだまだ圧倒的に生産者・生産量ともに山梨優位ではありますが、気候温暖化の影響により、この数十年で2℃ほど平均気温が上昇したため、甲府盆地よりも松本盆地の方がワイン用ブドウ産地として適してきたとのこと。 
 実際に勝沼でも大手のM社は塩尻に栽培地を確保し、フランス系品種はこちらが中心となっているようです。日本産ワインとして名高い「甲州」が減少し、新たに「信州」ブランドがトップになる可能性も…。

 さて、話は変わりますが、我が自動車産業においても、同様なことが起こりつつあります。CO2やNOxの排出規制でガソリンやディーゼルといった内燃機関製自動車が追いやられつつあり、現状ではハイブリッド車、そして将来的にはEV車が主流となる動きが各国で見られます。
 機械加工を中心に摺合せ技術の集積で、ドイツと共に世界をリードしてきた日本の自動車産業(ご当地静岡とお隣の愛知はその中心地域)も、いつまでも我が世の春となるかどうか?レアアース産地や薄膜加工・パワーエレクトロニクス、さらにはITの集積地が、その地位を虎視眈々と狙っているようにも思えます。
 伝統的ブランド地域としては、長年培った統合技術を基に、新たな産業地域を活用しながらも、引き続きリーディングカンパニーとしての地位を維持確保していくのか?あるいは思い切って新天地を求め、次世代産業に方向転換していくのか?どちらにしても、大胆な発想と、果敢にリスクテイクする姿勢が求められます。

 企業の舵取り役には、常に五感を研ぎ澄まして、獲物を狙い続ける精悍さが要求され続けることでしょう。





6.技術コラム
[強度設計について]
 東海道・山陽新幹線の台車に亀裂がみつかり、「あわや大惨事」ということで大きく報道されました。同じ製造業に身を置く立場としては決して他人事ではなく、問題の原因や対策を自分の仕事に置き換えて考えながら見ています。

 JR西日本のニュースリリースによると、削ってはいけないことになっている台車の部材を、溶接する相手にあわせて削ってしまい、その結果強度不足となり亀裂が入ったということです。そこで、機械設計者の目線で少し考えてみました。
 JRの発表では、あくまで設計上の問題ではなく製造工程の問題としています。亀裂の入った台車枠の形状を見ると、太さが変化していて応力が集中する部分にごく近い溶接部が亀裂の起点となっており、この部分の板厚が設計上7mm以上であるのに対し、最少4.7mmまで削られていたと報告されています。

 詳細の設計計算書までは開示されていないので、計算上の負荷荷重値や荷重条件、安全率などが分かりませんし、設計上の問題があると断定することもできません。ですが、溶接位置が応力集中点に近いのは気になるところです(溶接部は残留応力による強度低下が発生するため、応力集中点からは極力遠ざけるべき)。また、レールからの衝撃荷重を受けやすく、重大事故に直結する部分に対し、材料や加工のバラつき、溶接溶け込み深さなど不確定要素を考慮した安全率は適正であったか?図面上の溶接指示に問題は無かったか?などが恐らくJR設計部門で検証された項目だと推測します。
※詳細はJR西日本のニュースリリースを参照下さい。
https://www.westjr.co.jp/press/article/2018/02/page_11962.html

 問題が無くて当たり前、問題が起これば責められる、というのは世の常ではありますが、実際の設計においてはとにかく頑丈なものを設計すれば良いという訳では無く、トレードオフの関係にある強度と軽量化(高性能化やコストダウン)のバランスをどこでとるかがポイントとなります。
 改めてその難しさと重要さを考えさせられるニュースでした。
7.やまのひとりごと
 先日、浜松市にある秋野不矩美術館へ行ってきました。
 浜松市天竜区二俣出身の画家、秋野不矩さんの作品を中心に展示している美術館なのですが、展示されている作品もさることながら、美術館自体がとても美しかったです。中に入ると、人の手仕事の痕跡の感じられる暖かな雰囲気が漂っていて、触って踏みしめて楽しみたくなる空間でした。
藤森照信さんと言う建築家の方の設計だそうです。興味のある方は是非、行ってみてください。