目次
1.製品紹介
2.技術コラム
3.書籍紹介 
4.自動車開発最前線
5.青ちゃんの言いたい放題
6.技術コラム
7.やまのひとりごと









1.製品紹介
【オルタネータ性能試験装置】
入力された運転パターンでオルタネータをモータ駆動させ、
出力特性測定・負荷トルク測定内部温度分布測定・充放電収支測定に対応することができます。
【装置概観】
 




2.技術コラム
[数値化]
 羽生善治棋士がコンピュータに挑戦する権利を得るか注目されていた叡王戦。期待叶わず、準決勝で負けたとのことです。
 NEC主催の「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2016」の「人工知能は人間を超えるか」をテーマとしたセッションで同棋士は、人工知能を使った将棋ソフトの時代に、自らが取り組んできた江戸時代の古典を解いていく練習方法は役に立たなくなってきた、との発言をしています。さらに、これからの若い世代は人工知能を使ったトレーニングが必要だ、とも。
 これを裏付けるかのように、先の叡王戦では彼が対戦するはずだった対戦ソフトPonanzaが対局の読みを行っています。対局途中の劣勢から敗戦までの予測が的確にできていた模様。ともあれ、来年の電王戦では人間が難攻不落のPonanzaを打ち負かして欲しいものです。
 Ponanzaなどのソフトは、次の指し手を読み切る「探索」と読んだ指し手の良否を判断する「評価値」とから成り立っています。さらに棋譜データベースを作り、それを反復することによる学習で評価関数を自動生成。これにより、プログラマよりも強くなる機能を持っています。これがプロをも凌ぐ強さの秘密です。評価関数を使って差し手を数値化することが、プロ棋士の暗黙知を形式知に変換する術となっているのです。ここに、究極のナレッジマネジメントが行われている訳です。すばらしい!

 弊社では今、EPSシミュレータのタイヤ反力を制御するモータに適用するPIDをオートチューニング化しています。PIDのパラメータを総当りで組合せ実行、その評価値を計算して最適値を求めています。単純作業を自動化するだけなので、学習させるまでは至っていません。ですが、数値化させることで人間に対するインターフェースとしては最良。成果大です。
 数値化により、様々な場面で恩恵が得られることを感じます。




3. 書籍紹介
『今日からあなたも機械制御の通になる』  
涌井伸二著 日刊工業新聞社 2016年10月発行  
 当社の開発試験機はもちろん、電車・エレベータ・交通信号などの公共インフラ、また冷蔵庫・エアコン・IH調理器など家庭生活の隅々にまで自動制御装置は組み込まれています。最近の自動車開発現場では、メカハードより制御機器ハード・ソフトの方に投資の重点が移動している傾向も見受けられます。

 そんな制御ですが、文系の方だけでなく、理系の方でも実際の制御技術者以外は敬遠しがちなモノ。本書はそんな制御の全体像を極力わかりやすく解説しています。数式よりも事例を多用して、読者の拒絶反応を緩和している苦心がみられます。パラパラと眺めるだけでもそれなりに理解は深まるもの。一度、手に取ってみてはいかがでしょうか?





4. 自動車開発最前線
【ゼロエミッション】
 ゼロエミッションへの取り組みが世界中で進められています。
ゼロエミッションとは、人間の経済活動による自然界への排出をゼロにする仕組みを構築する活動。もちろん、自動車業界にもこの考え方は広まりつつあります。カリフォルニア州のZEV規制の浸透から、現状のエンジン車では走れない・作れない・売れない、という状況に陥ることすら現実味を帯びてきました。自動車先進国のアメリカやEU・中国・インドなどでは、古いレシプロエンジン車は一部では既に公道を走ることすらできないようです。日本のお家芸であるHEV(PHV)なら、電気自動車的部分もあり問題なさそうですが、実はこれでもZEV規制には対応できないとの情報も見られます。

 ここに来て日本の自動車メーカは、いち早くEV開発と市場投入を達成している三菱・日産に続き、トヨタ・マツダほかも相次いで電気自動車開発を主力開発として位置付けを明確にしています。いままで数年に亘り自動車新技術開発動向として取り上げてきましたが、自動車の将来像として考えてみると、このコラムを連載開始した当初(2011年7月)の状況とは全く違う環境になっていると思わざるを得ません。当時は今のようにEVが市場を席巻しそうだなんて思ってもみませんでした。
 実際にはまだ少ない占有率ですが、開発スピードやインフラ設備の拡充スピードなどを総合的に勘案して将来はEVが殆どかもしれない…と本気で思う今日この頃です。

 本誌をご覧いただいた読者様(スペースクリエイションファンの皆様…と勝手に思っています)の方々には申し訳ありませんが
“自動車開発最前線”は、この12月号を以って最終とさせていただきます。HEV・EV・FCVなどの自動車開発に対する興味は益々増大の一途であり、今後も注意深く見ていきたいと思っています。

長年お読みいただき、ありがとうございました。





5. -コラム-
大は小を兼ねない!?」
                                             /青木邦章
 弊社はご存じのとおり自動車産業向け開発試験機の製造販売を生業としています。当然のことではありますが、自動車関連技術の進歩に応じて試験機に対する性能要求も年々高度化する傾向にあります。しかし、それにしてもその要求が近年急激に度を越して高まっていると感じます。
 たとえば、従来10,000rpm程度だった最高回転数が20,000になり、25,000になり…。また、使用温度環境条件が低温・高温側ともにドンドン広がっていったり…。そんな回転で運転することがあるのか?そんな環境で人間が住めるのか?と思わず心の中で突っ込みを入れてしまう青ちゃんです。

 要求拡大の根底には、実際の使用環境にマージンを持たせて安全サイドに振ったり、将来の製品の進歩を睨んで余裕を持たせたり高額ゆえそうしばしば購入することも難しいので汎用性を持たせたりと、いろいろな思惑があるようです。
 しかし、そのために試験機としてのまとまりが崩れ、使いにくくなることもままあります。装置納入1年後に何かの折に訪問ヒアリングすると実際の使用範囲はごく限られた領域のみ、そういったケースがしばしば。
 試験機に使用する機器・センサには、分解能・繰返し精度・直線性などと呼ばれる各種性能がありますが、それらはたいがい機器使用範囲(フルスケール;F.S.や定格出力;R.O.)の○.○○%と規定されるのが通常。いたずらに余裕を持たせると、常用範囲の精度が低下してしまいます。
 例えて言うと、卵や封書の重さを体重計で測るようなもの。あるいは、ちょっとコンビニに買い物に行くのにスーパーカーに乗ったり、山間部の農家がたまには重いものを載せるからといって通常作業に軽トラ四駆ではなく4tトラックを使ったりするようなもの。使いにくい上に本来の役目を果たさず、事故やミスを生むリスク大です。

 世の中すべて中庸が大事。常用範囲を正しく捉えて、それにふさわしい試験機を調達するのがベスト。そして、新たな需要には新規増設で対応いただくのが弊社としてもベスト?(笑)




6.技術コラム
[機械工学の4力学]
 機械工学は「材料力学」「機械力学」「熱力学」「流体力学」という4つの柱となる力学があり、これを「4力学」と呼んでいます。機械技術者であればこの4力学を理解することは必須条件であり、大学などの機械工学でも必ず基礎から学びます。
 当社で深く関わっている自動車業界でも、この4つが深く関係しており機械設計の各種設計計算の基礎は全てこれらの力学からなるため、きちんと理解していないと思わぬ失敗をする事もあります。今回はこの4力学の概要をご紹介します。

 ①材料力学:その名のとおり、機械などを構成する部品の材料についての力学で、各種材料にかかる力により、どの様に変形・破壊するかを扱います。部品材料の選定や、各部品の形状や大きさを決めるための強度計算に必要で、フックの法則や梁のたわみなどが代表的なキーワードです。4力学のなかでは比較的理解しやすいと言えるでしょう。

 ②機械力学:材料力学が静止しているものを対象とし、材料が変形することを前提にしているのに対し、こちらは動的な剛体の力学、つまり動いていて変形しない対象をニュートンの運動方程式などを用いて解析するものです。例えば振動解析やリンク機構など、機械の構造や機構を決めるために必要で、材料力学とあわせて機械設計の基本となります。

 ③熱力学:エネルギーの一種熱の力学です。エネルギー保存則を基本としたいくつかの法則に基づき、熱の移動や熱による各種の機械的な影響を扱います。当社の開発試験機においては、潤滑油の温調ユニットや恒温槽の設計などに必要とされます。摩擦による発熱が軸受けの焼付きなどの故障に繋がる事もあるので、熱に関する知識は重要ですが、目に見えないモノを扱うため、なかなか理解しにくい部分もあります。

 ④流体力学:液体と気体、つまり流れる物質を扱う力学です。容器に入った動きの無い状態を対象とする流体静力学と、管などの中を動いている状態を対象とする流体動力学とに分類されます。前者ではアルキメデスの原理、パスカルの原理などが、後者ではベルヌーイの定理などがそれぞれ有名なところです。自動車においても、燃料・潤滑油・冷却水などの液体、エンジンの吸排気や車体の空気抵抗などの気体、これらが重要な意味を持ちます。開発試験機でも各種流体を扱うため必須の学問です。

 次回以降、これらの4力学の基礎についてもう少し詳しくご紹介していきたいと思います。






7.やまのひとりごと
 寒さが本格化する前に終わらせたいと思い、休日にコツコツと大掃除を進めています。
晴れの日の朝からとりかかれば水周りや外掃除も寒くありませんし、汚れた雑巾やエプロンを洗濯してもその日のうちに乾くので良いことづくめ。
 ですが、既に掃除が完了したはずの台所やお風呂の汚れが気になってきました…。この調子では年末も大掃除に追われそうな予感がする、やまなのでした。