目次
1.製品紹介
2.技術コラム
3.書籍紹介 
4.自動車開発最前線
5.青ちゃんの言いたい放題
6.技術コラム
7.やまのひとりごと









1.製品紹介

【対向式モータリングベンチ】

本装置は、AT/MTトランスミッション内部品の信頼性性能試験及び
性能開発試験を行う装置です。

 

2.技術コラム
[定型化]

 定型化することは、平均的で安定した技術を提供するのに非常にわかりやすい管理法だと思います。でも、定型化の同義語にはマンネリズムやワンパターン、非独創性などがあり、むしろ弊害的な意味あいも多いようです。特に問題に直面したときに、平常時にあまりに定型化に頼りすぎていると固定観念から抜けられず膠着状態に陥ってしまうことがよくあります。

 最近はEメールなどで、過剰な丁寧語が見られるような傾向にあります。日頃使い慣れていないのに、ここぞと形式ばった文章を書くのでそうなってしまうのかもしれません。メール作法や定型化されたフォーマットのある文章まではいいのですが、形式を外れた途端、丁寧過ぎておかしいんじゃないの?と読み手に感じさせてしまう文章が完成するようです。

 装置のデータ処理なども同様なことが見受けられます。解析には各部署ある程度決まった方式があります。例えばデータにノイズが乗っていた場合、信号データにFFT解析を行いその原因を探るなど。一通り解析を行って原因が解明できないこともよくある話です。先輩が定型化した解析運用手順に従順に従うばかり。むやみやたらに解析を重ねると、何を目的としているのか判らないような波形が再現、解析の答えはなかなか出てこなくなってしまいます。

 神戸大学の調査によれば、大企業の技術者に基礎数学的な問題を課したところ正解率がかなり悪かったとのこと。これもあまりに受験情報過多で、定型化された教育の落とし子なのだろうと思います。

 定型化から抜け出すにはどうするか?型にはまって抜け出せないのですから、型を崩すしかないです。この時、元になっていた定型化手法を横に置きながら自分の型を組み立てると、先人の考えが見えてきます。そして直面する問題になぜ適用できなかったか、似た方法でどのように対処すべきかが見えたとき、新しい型が出来上がります。







3. 書籍紹介
『これからの日本の論点』 2015年10月発行  
日本経済新聞社編 日本経済新聞社出版社   
 「一年の計は元旦にあり」、正月休み中、今年の抱負やこれからの人生設計に思いを巡らせていた方も多いかと思います。企業の事業計画や商品戦略についても同様ですが、そのためにはまず国際情勢や産業経済の動向を把握するのが第一歩。

 本書は、二十名以上の日経新聞編集者達がそれぞれの担当分野について、2016年の論点をわかりやすくまとめたもの。深みのある分析とは言えないかもしれませんが、過去の出来事を振り返っておさらいするためにも、一度は目を通してみても良いかもしれません。





4. 自動車開発最前線
【着々と進む自動運転技術】
 自動運転に関する技術情報は、今や自動車技術開発の最前線です。以前自動運転の定義(レベル)について述べましたが、再度確認したいと思います。加速・操舵・制動の三要素のシステム自動化状態を「レベル1:三要素のうち何れか」「レベル2:三要素のうち複数」「レベル3:全て+ドライバ補助」「レベル4:ドライバ補助なし」でしたが、今やレベル5が出現。それが無人走行車です。

 現状、レベル2まで技術的には達成とか。段々と人間の介在が少なくなっていくようで心配と見る向きもありますが、逆に人間の不確かな判断が少なくなることで、より安全性が増すとの考え方もできます。地上では2次元空間でコントロールするため、上下移動による衝突回避ができないもどかしさがありますが、話題のドローンは3次元空間(航空機を考え高さ120m)を自由自在に飛行が可能。そのドローンを使って目的の配達場所まで宅配してしまおうなんて、まるで“魔女の宅急便”?魔法のような技術が実現しつつあります。デリバリーゾーンと呼ばれる範囲を任意設定することで、「Prime Airドローン」が着陸し配達するそうです。要素技術開発としては、自動運転車と同じ感覚で見比べてしまいます。

 自動運転車開発においては、やはり世界をリードするのは日本だと信じていますが、これに関する自動運転技術基準は日本だけで決めることはできません。国際基準調和世界フォーラムなどでは、より具体的な方向性を導き出そうとしています。環境性能の高い自動車を世界で普及させることが、環境問題の悪化防止に役立つ事でしょう。

 大気汚染で目視確認走行が困難な隣国では、視界数メートル程しかない大都市走行に於ける安全性を考えるに、役立つのはやはり機械(センサー)なのではないでしょうか。暗闇でもセンサーで正確に導いてくれる自動運転車の期待は、むしろ日本より大きいかも知れません。




5. -コラム-
「命の重さ
                                             /青木邦章
 年の瀬はいつにも増してバタバタとしていますが、一方でふとした瞬間にいろいろとゆく年を考えさせられたりもします。振り返ってみると、最近どうも社会全体が危うい方向に向かっているのではないかと感じます。中東・アフリカに始まり、欧米にまで拡大しているテロの惨事。

 国内においても無差別殺傷事件はもとより、夫婦・家族・友人間にも繰り広げられる突発的殺人事件、また少年少女から老年にまで至る数多くの自殺報道。宗教・民族・南北問題に起因するトラブル、身近な集団内での軋轢・社会的不安。今に始まったことではなく、ただ単に情報の駆け巡るスピードが質・量ともに上がってきただけのことなのかも知れません。しかし、それにしても世の中全体、「命の重さ」というものが軽んじられているように感じるのは私だけでしょうか?

 SF映画やゲームの世界で繰り広げられる派手な戦闘シーン、都合が悪くなればリセットしさえすれば良いバーチャルな世界。一見、時間も空間も飛び越えて結びついてはいるものの、実は非常に軽薄なITを媒介とした人間関係。そういった日常生活が私たちの感覚を麻痺させているのかも知れません。

 元々、日本の文化・社会は家族単位の小さく濃密な関係から村・町・県そして国に至るまで連続して複雑に絡み合って織上げられていました。そういった中である一定の秩序が保たれていたのでしょう。また、南方・大陸・北方から渡来した文化を重層的に取込み、さまざまな宗教を時空間を超えて八百万の神として許容してきた懐の深さ。異質なものを狭い日本列島に共存あるいは変質許容する風土が生まれたのかもしれません。

 ともすると論理的整合性に欠け無節操とも思われるこのような日本をはじめとするアジア風の社会的特質。ますます人口の過密さを増す21世紀の地球環境にはもっとも適合している問題解決方法なのかもしれません。いつまでも欧米追随型のYes/or/Noの二項対立的外交手法に終始するのではなく、日本がリーダーシップを発揮して、アジア発の新たな国際協調外交路線を世界中に発信する時期が来ているようにも思えます。



6.技術コラム
[技術の未来予測]
 先日2015年10月21日、1985年に製作された映画「バックトゥザフューチャー2」の中で、30年後の未来にタイムトラベルする設定で描かれた日が現実となり、映画の中の30年後と現実の30年後とを比較した内容が話題となりました。タブレット端末やメガネ型コミュニケーションツールなどはむしろ現実の方が小型化・高性能化され、空飛ぶスケートボードも試作品ができているとかいないとか。日進月歩の技術革新を予測するのは非常に難しいですが、過去の予測を改めて検証してみるのもなかなか面白いものです。

 自動車業界においても今後のトレンドに関して様々な予測がありますが、それに関連する面白い映画があります。「誰が電気自動車を殺したか?」という2006年にアメリカで製作された映画ですが、1990年代に世の中に登場した電気自動車(EV)が、10年のうちに一度ほぼ完全に姿を消した(殺された)事実に対して自動車会社、政府、電池技術、燃料電池車、などをそれぞれ容疑者に見立てて有罪か無罪かを検証していく、というドキュメンタリー映画です。

 この中では、一度制定された排ガス規制が何故か緩和されたり、GMが一度は売り出そうとしたEVをリースのみとし、ある時突然再契約中止として好評だったEVを全て強制回収してスクラップにしたり、という一見不可解な事実を、当時の政治情勢や様々な技術の実情を細かく検証して背景を明らかにしていきます。

 この結論に対する評価や信憑性はともかく、興味深いのは10年前に作られたこの映画の中で燃料電池車にも触れているのですが、市販されるまでには30年かかるとし、5つの奇跡(製造コスト・水素搭載スペース・水素の価格・インフラ・HEVなどライバルとの競争)が必要と言っています。
 しかし実際にはほぼ10年でそれらの技術課題を(完全ではないにしろ)克服して水素を燃料とする自動車が販売されたことは、近年の技術革新のスピードを物語るものではないでしょうか。 

 そしてその技術革新の影の主役となっているのは、高い志を持ち、世の中のために役に立つ技術を追求している現場のひとりひとりの技術者であることも間違いありません。







7.やまのひとりごと
 あけましておめでとうございます。本年もSpaceCreationNewsをよろしくお願いいたします。
打ち震えるほどの大きな幸せでなくてもいいので、2016年は小さな幸せがたくさん見つけられる年にしたいですね。