目次
1.製品紹介
2.技術コラム
3.書籍紹介 
4.自動車開発最前線
5.青ちゃんの言いたい放題
6.技術コラム
7.やまのひとりごと









1.製品紹介

<二輪車用多板クラッチ試験機>
本装置は、二輪車用湿式多板クラッチの各種性能・耐久試験用台上試験機です。

駆動(高速)モータ、駆動(低速)モータ、可変慣性量式フライホイール
ブレーキ機構の組合せにより、イナーシャ吸収試験等多様な試験を行う
ことができます。レリーズ制御については、サーボモータ駆動により
高速・高精度の制御が可能です。




2.技術コラム
[10V測定]
 街にはEV車があふれ、モータ駆動の自動車が標準となりつつあります。現在モータの効率は90%~95%で、これを25%向上させようとする国家プロジェクトが進んでいます。5%の損失のうち25%を改善する試みで、100%比において1.25%の効率向上がミッションとのチャレンジとなります。

 このテストでは、電力計の最高確度が±0.06%のものが使われます。電力計算なので、電圧と電流がどれくらいの精度で測定されるかがキモとなります。さらにモータの効率を考える場合、入力電力と出力電力を比較する必要があります。出力はトルクと回転数の掛け算となりますので、トルクの測定がかなり重要で精度の良否を決定するファクターとなります。トルク計の最高精度が、直線性を謳ったもので0.01%となっていますので、額面通りに電圧出力が測れると仮定すれば、何となく測定は正しいかのように錯覚してしまいます。

 片や電圧測定するモジュールでは、±10V入力が一般的です。電圧変換範囲を見ると、10Vを16ビット、20ビット、24ビットで変換する仕様となっています。65,535、1,048,575、16,777,215で分割するので、分解能は3E-4V、2E-5V、1E-6Vとなり、これまた全く問題ない計算となります。

 先のトルク計の精度0.01%を電圧10Vにあてはめると、1mVで分解能は16ビットで十分です。机上では簡単に実現できるかのように感じます。でも実際には測定する際にノイズが乗ってきてしまいそれほど容易ではないのです。インバータが稼動するだけで数十mVのノイズが乗り、実際の測定値で掛け算すれば、効率の差が出てこないことになります。

 このようなクリティカルな問題を、データ分析しながら有意な結果を導き出す!弊社では常に精度を見つめながら装置のテストを行い、お客様のもとへ送り出しています。



3. 書籍紹介
『従属国家論 日本戦後史の欺瞞』 2015年6月発行  
佐伯啓思著 PHP新書
 この数か月、集団的自衛権関連の国会論争を中心として憲法問題がマスコミに大きく取り上げられています。東西(冷戦)対決構造が消滅し、代わりに南北(経済格差)問題や宗教問題による世界中の治安悪化を受けて世の中の秩序が再構成される時期に来ているのかもしれません。

 そういった中で、日本国憲法の取扱いについてさまざまな議論がなされていくのも自然の流れではありますが、意外にその本質は国民に深く理解されていないのも事実。本書は戦後日本の政治情勢にはじまり、太平洋戦争の総括、憲法制定の経緯、そして現在の日本を取り巻く情勢までを深く解説しています。

 やや右寄り、過激な思想が垣間見えるところもありますが、ただ単に政治論争というよりも日本人の国民性にも触れ、哲学や信念の無さ、大衆迎合・西洋崇拝主義に警鐘を鳴らしている姿勢。一読に値するものと思います。


4. 自動車開発最前線
「自動運転システム②」 
 今月も自動運転システムについてのお話です。

 最初に“自動運転”の定義についてですが、先月号でも少し触れたように自動化のレベルにより内容が異なります。レベルは1~4まであり、加速・操舵・制動の3要素をいくつ自動運転システムが行うか、またその要素に加えて緊急時対応をドライバが行うか、またはドライバが一切関与せず自動運転システムで対応するかでレベル分けされています。究極とされるレベル4の完全自動走行システムでは、事故原因の殆どであるヒューマンエラーを完全に排除することになります。 

 つまり主権と責任は自動運転システムにあるというわけですが、人間の五感によりセンシングされた情報を頭で考え最適な手段により目的を達成するという時間のかかるコントロールを、五感から来る外乱に惑わされることなく、自動運転システムにより高速に処理ができることから、間違いなく安全で快適な走行が保証されると考えられています。

 しかし、人間の極めて精密でありながらも、ある意味いい加減な五感センサに取って代わるセンシングは、実際どれだけの数のセンサが必要となるのでしょうか? 
実際の市街地走行に使用される自動運転のためのセンサには、話題のgoogle carを例にすると以下のセンサ類が使用されています。

① 360度の3D空間構造を読み取るための赤外線レーザ
② 自動ブレーキシステムのためのミリ波レーダ 
③ 走行距離計
④ GPS
⑤ 慣性航法のための6軸加速度センサ 


 なんと、基本的には上記の5種類で成り立っている!?ようです。
しかし、これも自動化のレベルにより異なると思われます。では、最初にどのような車両から自動化されるか考えると 公共路線バスが自動運転に最も適しているのではないでしょうか。実際カリフォルニアでは隊列走行のデモも実施されています。目的地とルートも明確(変わることが無い)ゆえ、試行するには適していると言えますが、完全無人化が難しいとなると自動運転化の必要性も薄らぎそうです。

 今や自動車は、モータとセンサとバッテリの塊と化していると言っても言い過ぎではありません。




5. -コラム-
「文理共鳴
                                             /青木邦章
 企業経営者の出身学部を眺めてみると、技術系ベンチャーは当然理系が多いですが、それ以外の大企業においては(カウントしたことはありませんが)圧倒的に文系が多いように感じます。理系出身の青ちゃんとしては何かしら違和感を覚えるのですが、それらの方々と接するとそのコミュニケーション力や企画力から、なるほどと得心する部分も多くあります。

 一方最近では、経営コンサルや経営系の大学教授には、理系のバックボーンを持った方も多く見られます。いわゆる大手企業研究所等からの文転組と言ったらよいのか、彼らはIT系やMOT系から徐々に文系(社会科学分野)に立ち位置を移していっています。
 どうやら開発途上にあるキャッチアップ型の国においては理系の出番も多くあるのですが、成熟型サービス産業寄りの社会においては文系が上位になる傾向がありそちらが注目されている故の現象かもしれません。(やはり地頭が良くて社会環境適合性に長けている方は、時流を泳ぎ切るのがうまいのでしょうか?)

 表題は社会科学系の単科大学学長が数年前に提唱したキャッチコピーで、理系・文系のそれぞれが専門性に磨きをかけ、互いに巧みに連携し大きな成果を社会に提供する、といった意味のようです。
 社会全体が高度に複雑化してまた、異なる文化・経済圏が相互に絡み合って、絶えず広範囲に流動している現在においては、企業の舵取りもより一層高度に複雑化していきます。

 そこで求められる人材についても文理両方をステレオタイプに区分けするのでなく、かといって単純にそれらを融合するのでもなく、それぞれどちらかに軸足を置きながらも、他方に対しての一定の理解力を持ったうえで、そういった人材とうまくコラボレーションしていくような才能が大切なのかも知れません。

 真のイノベーションというのは、おそらくそういった境界線をうまくコントロールすることによって多く生まれてくるのでしょうね。



6.技術コラム
[人との関わり、機械との関わり]
 私たちは普段から社内の仲間はもちろんのこと、お客様や取引先など多くの人と関わりあいながら仕事をしています。技術者であっても図面やパソコン、機械だけ相手にしているという訳にはいきません。その人間関係では様々な利害関係や意見の対立などがあり周囲の人全てが自分の考えている通りに動いてくれる訳ではありません。むしろ、自分の思う様に動いてくれない事の方が多いでしょう。そもそも同じ体験や概念を持っていない人同士ですからあたり前の事なのですが、ついつい「何故俺の思った様に動いてくれないのか」「何故言った通りに行動しないのか」という不満を持ってしまいがちです。

 そこでわかってくれない相手が悪い(相手が馬鹿だ)と思ってあきらめてしまうとそれきりですし、権限や恐怖で無理やりに動かしたとしても、その時は仕方なく行動しても次もまた同じことの繰り返し、お互いに辛い思いをすることになります。「人は何を言われたかで動くのではなく、誰に言われたかで動く」とも言われますが、自分の考えを理解してもらうには信頼関係がある事が前提で、普段から感謝や尊敬の気持ちを持ち、それを相手に伝える事が良い人間関係を築く基本だと思います。上司であっても部下から、親であっても子供から学ぶことや感謝する事はたくさんあるはずです。

 一方、技術の世界では感情の入り込む余地はなく、どれだけ愛情を込めて(?)設計したり調整したりしても物理的な限界を超えれば機械は壊れますし、プログラムが間違っていれば思った通りに動いてくれません。逆に、きちんと設計して図面通りに組み立て、正しいプログラムを入れればどんなに酷使しても文句ひとつ言わずに働いてくれます。これを無機質でつまらないと思うか、対人関係の様な煩わしさが無いと捉えるかそれはひとそれぞれですが、人に対しても機械に対しても誠実に向き合って良い関係を築いていけるのが一流のエンジニアなのかもしれません。




7.やまのひとりごと
 少しずつ、秋の気配がしてきました。
日が短くなるのは少し寂しいですが、穏やかな気候になるのはありがたいですね。
 コンビニやスーパーのお菓子売り場にお芋や栗の味のお菓子が並び始めると、一気に秋の訪れを感じます。